筋力トレーニングと腰痛

腰痛のみならず肩こりや頭痛など慢性的な症状に対して、筋力トレーニングが有効であると認識している方も多いのではないでしょうか?

病院や治療院等に行かなくても自宅で手軽に始められますし、テレビなどのメディアで芸能人やアスリートが紹介していると、それだけでなんだか効果的な気がして来ると思います。

筋力トレーニングにも様々な種類があります。自分の体を支えたり体重を利用して行うボディウエイトトレーニング、ダンベルを使った運動やベンチプレスなどの器具を使ったウエイトトレーニング、チューブを使ったトレーニングなどです。今流行りの体幹トレーニングはボディウエイトトレーニングの中に含まれます。

非常に多種多様なトレーニングがありますが、どの筋力トレーニングにおいても言える事は、電気信号による脳と体の往来が活発になり、筋肉が刺激され、様々な物質交感が行われるという事です。

しかし上記における効果は、重力に抗して日常生活を送っている段階でも行われています。言い変えますと、立ったり座ったりしているだけでも電気信号により、筋肉は刺激されているのです。

筋力トレーニングのように筋肉は刺激されているのに、日常生活や仕事での動きにより、腰痛などの慢性痛を引き起こす事があります。それは特定の筋肉にのみ負担がかかり、ある筋肉は眠ったように働いてない状態だったり、筋肉の長さがそれぞれの部位で異なってしまう使い方をする事にあります。筋肉の長さが異なるとは姿勢不良の状態を指します。猫背で座った状態では、お腹の筋肉に比べ背中の筋肉は伸ばされ長くなります。

筋力トレーニングでも同様で、間違ったフォームで動作を行ったり、鍛える必要のない部位を鍛える事により、筋肉にアンバランスが生じ症状を悪化させる事があります。正しく行えば慢性痛の予防の手助けになる事はありますが、急性腰痛や重度の腰痛症では改善は期待出来ません。

重度の腰痛の改善が筋力トレーニングでは期待出来ない理由としまして、筋肉は筋膜や皮膚など他の層の組織と相互に協力して円滑に伸縮しなければなりませんが、それら組織どうしが引っ掛かり円滑に動かなくなった場合、自重であれ器具の重さであれ負荷をかけた所で動くようになるわけではないからです。

その際は組織間の引っ掛かりを手で外さなくてはなりません。通行中服がフェンスに引っ掛かった所を想像してみて下さい。引っ掛かっている所を直接手で外さなければ解放されません。手を使わず無理に先に進もうとすれば服は破けますし、少し戻った所で外れはしません。筋力トレーニングはまさにこのような状態です。

ではなぜ場合によっては効果的なのか?それは元々伸縮に問題がなく円滑に動く筋肉のキャパが広がり、身体の保持や関節運動の手助けになる場合があるからです。働けていない筋肉の仕事を補ってくれるとも言えます。

オーバーな例としては10kgのお米を50kgの男性が持つより、100kgの男性が持つ方がより余力を残しながら持つ事が出来ます。そのため自分の身体、体重を扱う事にも余裕が出来、慢性痛にも一定の効果を出す事があるというわけです。

いずれにしても身体全体の筋肉のバランスが取れ、筋肉運動が円滑に行われると、慢性痛はほぼ出現しませんので、腰痛や慢性痛の予防という観点からは筋力トレーニングは不必要になります。ライフスタイルにもよりますが、正しい生活動作を行えば健康に生きていく上で必要な筋肉は獲得できるからです。

反対に働いていない筋肉を無視して他の筋肉を鍛えて補うと言う事は、筋バランスが悪いですし燃費が悪く疲れやすくなります。ですから筋力トレーニングはバランスのとれた正しい身体を手に入れてからというのが本来は基本になります。

これら情報を踏まえた上で正しく筋力トレーニングをして頂きたいものです。