立ちっぱなしの仕事による坐骨神経痛の患者さん

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前回と同じく立ちっぱなしの製造業をされている坐骨神経痛の患者さんについての臨床例です。

坐骨神経痛についてですが、慢性腰痛や腰椎椎間板ヘルニアなどに付随してみられる症状で、病名ではありません。坐骨神経は背骨の腰部分にあたる腰椎から足先にかけて伸びる長い神経で、そのどこで圧迫を受けても症状は出現しますが圧迫部位より上の範囲に症状が出る事は少ないです。

この方の坐骨神経痛の既往歴は約5年間で、これ迄市立病院や松田整形外科、ペインクリニック等を受診し、X線やMRI検査の結果、腰椎椎間板ヘルニアと診断されたようです。鍼治療を受けて痛みが止まった時期はあったものの、一ヶ月前位から再発。これ迄で1番痛いとの事です。

お仕事は製造業をされていて立ちっぱなしの様です。前回”椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛製造業女性”で紹介した患者さん同様、製造業など立ちっぱなしの仕事の方に比較的坐骨神経痛は多い傾向にあります。腰椎だけでなく股関節や膝関節、足首なども坐骨神経痛に関わってくる事が多いですが、座り姿勢や動きのある職業に比べ股関節以下にかかる負担が多いためと思われます。

坐骨神経痛で痛む範囲は、坐骨から大腿の外側を通り外くるぶしにかけてと、坐骨から大腿裏を通りふくらはぎにかけての範囲の中で、重ねて腰痛も併発しています。その時の状態により痛む範囲が移動するようでした。

初めて来院された際、夜も眠れない日がある程痛みが強く、痛み止めの薬も効かなくなっていました。院内に入って来られた時、患側である左脚をやや引きずる様に歩いて来られました。右脚と同じ様に荷重をかけると痛みが強くなるためかばった歩き方になり、静止して立っていても同様に極端に右脚に荷重をかけています。

さらに患側の股関節は内巻に捻れているため、上半身を右に捻った方が楽なようで、誰でも一目でわかる程に回避姿勢(無意識にかばう姿勢)を取っています。

股関節を始めとする左脚全体の歪みは顕著なので、その事に起因する坐骨神経痛である可能性は高いですが、整形外科で診断された椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛かどうかも疑ってみます。

視診触診の他、様々な徒手検査を行った結果、椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛ではなさそうです。整形外科で腰椎椎間板ヘルニアと診断されたのは5年前なので、現在迄に身体の免疫細胞であるマクロファージがとび出た椎間板を食べてくれた可能性がありますし、痛みの波はあったにせよ5年もの間痛みはほぼ続いているので、元々椎間板ヘルニアによる坐骨神経痛ではなかった可能性も捨てきれません。

これらのデータを参考にまず左脚の歪みを正して行きました。関節や骨格だけでなく、筋肉や筋膜の捻れも正して行きます。整形外科等では保険請求上診断名を付けなければならないので、腰椎椎間板ヘルニアや腰椎分離すべり症などと診断を下す事は多いですが、実は坐骨神経痛の原因が筋肉の歪みだったなど、診断名をつけようがない理由によるものは以外と多いです。

左脚を正した結果、患部の痛みが少し和らいだとの事でしたが、まだ痛みは残るようでした。

左脚が痛いがため右脚に荷重してたわけですが、その事により左右の脚の水分バランスが変わっていました。荷重の少ない左脚に水分が片寄ったため、左脚の内圧が高まった事による痛みも重ねて起きていましたので、キネシオテーピングを利用して右に片寄り過ぎた身体を少し左に戻しました。

その後痛みがぼやけたように放散し、不快な痛みは少なくなったとの事だったので、一回目の治療は終了となりました。

立ちっぱなしの仕事且つ、悪いフォームでの仕事の癖も残っていたので、調子の波はありましたが、二ヵ月が経つ頃には痛み止めを卒業し、夜も熟睡出来る程に痛みが減ったとの事でした。これからの目標は少ない痛みを完全に消しつつ、骨格構造を理想の位置迄持って行き、再発しない健康な身体に持って行く事が患者さんとの共通認識になっています。